名古屋大学宇宙開発チーム「NAFT」は2023年10月に「火星ローバー開発プロジェクト」を立ち上げ、火星探査機の世界大会「University Rover Challenge(URC)」への出場と、将来の火星進出を目指し活動しています。開発したローバーには、当社のブラシレスモーターが活用されています。今回は、代表のMasumi OさんとプロジェクトマネージャーのMomona Hさんに、プロジェクトの経緯やローバーの魅力、大会の振り返りをインタビューしました!URCとは?URCは、火星探査機の設計と製作技術を競う国際的な大学生向けコンテストで、アメリカ・ユタ州の砂漠で毎年開催されています。大会では以下の4つのミッションに挑戦します。1.土壌サンプルを採取し生物の有無を分析2.起伏の激しい地形を越えて物資を運搬3.ロボットアームで模擬宇宙船をメンテナンス4.目的地への自立走行名古屋大学宇宙開発チーム「NAFT」について2012年設立、「宇宙開発を楽しみ、その魅力を発信すること」を目標に活動する学生団体です。約50名が所属し、火星ローバー開発、CanSat※、ロケット、宇宙教育の4つのプロジェクトに取り組んでいます。「火星ローバー開発プロジェクト」には約20名が所属し、車体、アーム、電装、自律制御、通信、科学の6つのチームで開発を進めています。※CanSat:小型模擬人工衛星「自由な発想で宇宙開発を!」 プロジェクトのはじまり―NAFTに所属した理由を教えてください!インタビューしたMomona Hさん(左)とMasumi Oさん(右)Masumi Oさん小惑星探査機「はやぶさ」を見て、「かっこいい!自分もこんなものを作りたい!」と、宇宙に興味を持ちました。将来、宇宙探査に携わるための技術を身に付けようとNAFTに参加しました。Momona Hさんみんなで大きなプロジェクトに挑戦できる点に魅力を感じ、NAFTで活動を始めました。―なぜ火星ローバーの開発に取り組もうと思ったのでしょうか?Masumi Oさん自由な発想で宇宙開発に挑戦したいと考え、世界的に注目が集まる火星探査に着目し、1年生の時に友人と「火星ローバー開発プロジェクト」を立ち上げました。ワイヤー減速機構が強み! こだわりが詰まった火星ローバー―製作したローバーの強みやこだわりを教えてください!Masumi Oさん以前はモーターをタイヤの車軸に取り付けていましたが、障害物にモーターが接触してローバーが動けなくなる問題がありました。そこで、モーターを2つのタイヤの車軸に垂直方向に配置し、障害物との接触を最小限に抑え、スムーズな走行を実現しました。Masumi Oさんロボットアームには独自のワイヤー減速機構を採用しています。「面白い機構を実現したい!」という想いから取り入れたアイディアです。最初は、切断を防ぐために太いワイヤーを選んだため巻けないトラブルが発生しましたが、試行錯誤を重ねて最適なワイヤーを選定することができました。挑戦の連続! チームで協力して課題を一つずつ克服―ローバーの開発で挑戦的だった部分は何ですか?Momona Hさんプログラミングに不慣れなメンバーが多い中、新しい制御ソフトを導入しました。最初はノウハウがありませんでしたが、制御方法の基礎を学び、ローバーを動かしながら経験を積むことで、必要な知識を身に付けることができました。また、独立ステアリングの制御が難しく、地面の状況によって動作が不安定になることがありました。制御面とハード面が複雑に絡み合いましたが調整を重ねて最終的にスムーズな動作を実現することができました。試行錯誤を重ねるメンバー「楽しい」を原動力に! やりたいを叶えるチーム運営の秘訣―チームマネジメントで工夫したことはありますか?Masumi Oさんチームメンバーのリソースを適切に配分することに注力しました。メンバーごとに得意分野やスキルが異なる中で、効率的にタスクを割り振るのは簡単ではありませんでしたが、私は「楽しい」という気持ちが活動の原動力だと考えています。それぞれがやりたいことに取り組める環境を整えることで、結果としてプロジェクト全体がスムーズに進むよう意識しました。Momona Hさんメンバーには自由に活動し、積極的に意見を出してほしいと考えているため、個々の意見やアイディアを尊重しつつ、チーム全体が一つの方向に進むよう調整しています。また、自分自身が楽しむことが良いチーム作りにつながると考えています。積極的に意見を出し合うメンバーゼロから完成させた経験が糧に! 悔しさもバネに本大会へ―2025年のURCの振り返りについて教えてください!Masumi Oさん技術やノウハウが全くない状態から、大会主催者が求める課題をこなせるローバーを完成させたことは大きな成果でした。一方で、動画審査を惜しくも通過できず、本大会に出場できなかったのは非常に悔しかったです。本大会出場には、ローバーの信頼性や動作の安定性向上が必要だと考えており、2026年の大会に向け課題を一つずつ克服していきたいです。―今後の抱負について教えてください!Momona Hさん2026年のURC本大会への出場を目指し、ローバーの信頼性向上に注力していきたいです。弱点を徹底的に洗い出し、大会本番を想定した練習を重ねて準備を進めたいと考えています。また、新入生への技術継承にも力をいれていきたいです。―「自由な発想で宇宙開発に挑戦したい」という強い想いを胸に、ゼロからローバーを開発された皆さんの吸収力や、ものづくりを楽しむ姿勢に深く感銘を受けました。2026年こそURC本大会への出場を果たせるよう、心より応援しています!貴重なお話をありがとうございました!