学生団体「ARES Project」は、日本勢として初めて火星探査機の学生世界大会「University Rover Challenge(以下、URC)」に出場しました。当社は彼らにモーターを提供し、その活動を応援しています。今回は、代表のDanishi Aさんと中心メンバーのRyouji Nさん、Kouta Mさん、Kenta Yさんの4人に、火星探査機の設計・開発に挑む想いや大会の振り返りをインタビューしました!今回取材した代表のDanishi Aさん(左上)、Ryouji Nさん(左下)、Kouta Mさん(中央)、Kenta Yさん(右上)URCについてURCは、火星探査機の設計と製作技術を競う大学生向けのロボットコンテストで、毎年アメリカ・ユタ州南部の砂漠で開催されています。大会では以下の4つのミッションに挑戦し、得点を競います。土壌からサンプルを採取し、生物の有無を分析起伏に富んだ険しい地形を超えて物を運搬 ロボットアームを使い、模擬宇宙船をメンテナンス目的地に向かって自律走行学外のプログラムで運命の出会い!宇宙開発への想いに共鳴-なぜURCに挑戦しようと思ったのでしょうか?Danishi Aさん火星探査機の開発に興味があり、学部生の頃※から大会の存在を知っていました。日本チームでの出場を夢見ていましたが、費用やメンバーの確保が難しく感じていました。そんな中、学外のプログラムで出会ったのがRyouji Nでした。※現在、博士課程で宇宙工学を研究しています。Ryouji Nさん私は幼少期から宇宙開発に興味があり、特に惑星探査機を開発したいと考えていました。Danishi Aの火星に関する知識やカリスマ性に惹かれ、「このチャンスは逃せない!」と思い、一緒にARES Projectを立ち上げました。Danishi Aさんメンバーは集まったものの、初めは活動の方針が定まっていませんでした。そこで、メンバーにURCについて説明し、正式に挑戦することを決めました。-なぜ火星に注目し、探査機を開発したいと考えたのでしょうか?Danishi Aさんまだ誰も火星に行ったことがないからです。将来は火星に行く挑戦ができる宇宙飛行士になりたいと考えています。URCは生命探査など火星ならではのミッションに取り組め、良い経験になると感じました。Kouta Mさん私は創設メンバーだった先輩に誘われ、宇宙で動くものに興味があったため、参加しました。Ryouji Nさん火星が注目を浴びているからこそ、火星探査機の開発に取り組みたいと思いました。現在、ARES Projectは東北大や慶應義塾大など約40人の学生が所属し、東北と東京の2拠点で活動しています。ローバー本体の設計・開発を担う東北班、ロボットアームの設計・開発を担う東京班、土壌や岩石のサンプルの採取・分析を担うサイエンス班の3班に分かれています。東京班のリーダーをRyouji Nさん、東北班のリーダーをKouta Mさんがそれぞれ務めています。3班に分かれてローバーの開発に取り組むARES Projectのメンバー完成に半年!一から作ったサイクロイド減速機が強み-どんなポイントにこだわって今回のローバーを開発されたのでしょうか?Danishi Aさん開発ではローバーの大型化に苦労しました。ミッションの達成にはある程度の大きさが必要なのですが、重量が増加すると壊れやすくなります。また、制御面では柔軟かつ素早い動作の実現が難しかったです。そのため、大きくてもきちんと動くローバーの開発にこだわり、大会本番までに7台のローバーを製作しました。開発したローバーの強みDanishi Aさん最初は資金力がなかったので、モーターを提供していただけることになった時はみんなで喜び、モーターに合わせてローバーを設計しました。大会本番は砂嵐が吹き荒れる厳しい環境でしたが、モーターは安定して動作しました。Ryouji Nさんロボットアームでは、高トルクと高精度を両立するため、サイクロイド減速機を自作しました。減速機の機構が珍しいため、インターネット上に公開されたノウハウが少なかったことや、部品数が多く金属加工に時間を要したことから、設計から完成まで半年以上かかりました。Kouta Mさん寸法や構想荷重を間違えることが多く、試行錯誤を繰り返しました。失敗を重ねたことで、強靭な足回りを作ることができました。2拠点だからこそ お互いに学び、支え合うメンバー-試行錯誤しながら理想のローバーを完成させていったのですね!2拠点での活動に伴う苦労や工夫はありましたか?Danishi Aさんローバーは東北班、ロボットアームは東京班で開発していたため、両方を組み合わせた状態で動作させる機会が限られていました。オンラインミーティングだけでは煮詰め切れないことが多く、ローバーとロボットアームそれぞれの動作は問題ないのに、取り付けるとうまく動かないことがあり、大変でした。中心メンバーでミーティングを重ね、作業中もオンラインでつなげたり、定期的に進捗状況を共有したりするなど運営を工夫しました。メンバー全員が集まれるように外部のイベント・展示会にも参加しました。Ryouji Nさん2拠点の良さもあります。大学ごとにメンバーの性格に特徴が見られるのですが、東北班のメンバーの真面目な姿勢から学べる部分は多く、プラスの化学反応が起きています。Kouta Mさん東北班にとってもそれは同じです。東北班は慎重派が多く、東京班は勢いがあってアグレッシブな選択をすることが多いです。お互いに足りないものを補い合える関係です。お互いに協力し合い、高め合うメンバーチームワークを発揮!初出場にして特別賞を見事受賞―お互いに刺激し合い、支え合えるとても素敵な関係性ですね!一丸となって取り組み、出場したURCはいかがでしたか?アメリカ・ユタ州南部の広大な砂漠で開かれたURCDanishi Aさん大会会場のスケールの大きさに驚きました。技術的な面はもちろん、大会直前や本番中に関してチームの方向性を詰め切れていなかったことが反省点です。数日間の大会本番中に改善していきましたが、メンバーが迷いなく動けるようにするためには、事前にチームの方向性を明確にして共有しておくべきだったと思います。一方で、日本勢初出場という目標を達成できたことはメンバーの自信につながりました。Ryouji Nさん現地では数えきれないほどのトラブルが発生しましたが、離れて開発していたとは思えないほどチームワークを発揮できたことは非常によかったです。良いチームワークを発揮できた時に高揚感や幸福感を強く感じました。大会中に得た絆は、今後の活動を進めるうえでの大きな財産となりました。Kouta Mさんチームプレーの瞬間として、ミッション開始まで時間が無い中で壊れてしまったタイヤのモジュールを急いで直したことが印象に残っています。奇跡的に予備のパーツがあり、私とRyouji N含む3人の動きがかみ合い、短時間で修理できました。Kenta Yさん私は広報・渉外チームとして、団体立ち上げ初期からサポートしてきたのですが、目標としていたURCでみんなが作ったローバーが動いた時は興奮しました。サイエンスミッションでは、素晴らしいプレゼンテーションと、発表者を支えるチームワークが評価され、特別賞「Spirit Award」を見事受賞しました。宇宙の課題解決を目指し、挑戦は続く―多くのことを感じ、充実した大会だったのですね!今後の目標について教えてください。Danishi Aさん強靭なローバーの開発や火星探査の難しさを改めて感じました。また、お互いに協力し合い、戦えるチームであることを再確認できたことも大切な気づきとなりました。来年の大会優勝を目指し、優勝に必要な技術を考えて開発を進めています。優勝だけでなく、学生大会の枠組みを超えて宇宙の課題を解決できるよう、ローバーの機構や制御を開発したいです。